2020年に新型コロナウイルスのパンデミックが始まってから、世界的にメンタルヘルスの状態が悪化しているとOECD(経済協力開発機構)は報告しています。不安や抑うつの有病率が増加し、欧米諸国では以前に比べて2倍かそれ以上となった国も少なくないということです。
たとえば、気分の落ち込みが続き、今まで楽しめていたことが楽しめない、眠れない、食欲がない、考え方も否定的になった等の症状が続き、仕事や生活に支障をきたしている場合、うつ病にかかっている可能性があります。(今お読みになっている方でその疑いのある方は、くれぐれも自己判断せずに必ず専門家に相談してください。うつ病と間違えやすい病気はたくさんあります。)
うつ病の治療としては、薬物療法とともに休息をとることが基本とされてきました。(厚生労働省のみんなのメンタルヘルスというサイトにも「うつ病を克服するためには、早めに専門家に相談し、しっかりと休養をとることが大切です」と書いてあります。)いろいろと焦る気持ちがあっても、とりあえず荷を下ろして一旦しっかり休むことで元気が湧いてくることが期待できます。
カウンセリングの経験を踏まえて考えてみても、うつ病の程度にもよりますが、私も原則として休息してもらうことをお願いする対応は間違いないのではないかと思っています。「原則として」と言ったのは、うつ病の回復期などには少しずつ行動を増やしていくことも必要になってくるからです。
ただし近年はこうした休息の対応を見直す考え方も生まれてきています。たとえば回避行動がうつ病を悪化させるという考えに基づいて、スケジュールに沿って目標志向的行動に取り組んでもらい、それに伴う気分の変化を観察してもらうようなアプローチも取られるようになっています。
急に深刻なうつ病に陥った人と、軽い落ち込みが長期に続く人とでも、カウンセリングの対応が違います。後者は神経症的または性格的な要因がからんでくることも多く、私は休息というよりはより行動的なアプローチをとることも多いです。
このように見てくると「うつ病すなわち休息」と単純に言い切ることもできないことがわかると思います。カウンセリングでは、相談される方の現状に照らし合わせながら、休息をしたほうがいいか、行動を始めたほうがいいかについてご一緒に検討していくことができます。おひとりひとりの状態にマッチする対応をオーダーメイドで考えていけるところがカウンセリングの強みなのです。
( カルガモ。牛久沼にて )
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