前回は一例として「たとえば、熱いお茶を飲んで深呼吸しておおらかになると、人の状況全体に目を配り、より温かみのある判断をくだすことができます」と書きました。
一応、誤解されないようにお伝えしておくと、「熱いお茶を飲んで深呼吸」というような簡単な対処法が、もちろんすべてではありません。「私の悩みはそんな単純なものではありません」と言いたくなる人もいるでしょう。確かに、それを一回行えば即座にイライラが解消するものでもないでしょう。生活上の心がけのような意味合いで考えていただくと、より多くの人に理解してもらえると思います。
「身体を温めること」は古来、東洋医学の基本とされています。またトラウマ記憶への対処に関して、多くの現代的な文献を当たってみても「呼吸法」という言葉が頻出します。両者とも、きわめて当たり前のことに聞こえる人もいるかもしれません。しかし、それらの安心効果には、現代科学でも十分に解明されていない深い、そして重要な秘密があるように感じられます。基本的なことであればあるほど奥が深く、見落とされがちと言うこともできます。
カウンセリングではリラクセーションという一分野があって、たとえば自律訓練法などはカウンセリング業界や心療内科領域を含めて有名です。生活のなかでリラックスして、ほっとしている瞬間や、ぼんやりしている瞬間のことを「自律訓練状態」と呼ぶことがあります。自律訓練法はこの「自律訓練状態」を作り出す方法です。カウンセリングに導入していく場合、面接場面や生活のなかの空き時間にそれを実施してもらって、心身の緊張を緩めることを、ある程度時間をかけて覚えてもらいます。
繰り返しになりますが、「おおらか」とは、ゆったりしていて、慌てたり怒ったりしない様子を表す言葉です。英語で言うと generous や easy-going です。Take it easy. (気楽にね)という言い方もあります。気持ちに余裕があって、自分に対しても周りの人に対しても優しくなれる、そんな状態をストレスの多い生活のなかで増やしていきたいものですね。
オオバン( 手賀沼 )
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