あるとき、受付の森さんがにっこーーーーりと笑いながら2冊の本を私に手渡しました。 …なるほど、しまうまカウンセリングが今月皆さんにおススメしている本ですね。 ・・・えっと・・・読むと良いよ、と?? ふむ、どれどれ。
★『薬剤師のための 死と向き合う患者のこころのケア』 清水研・著 株式会社じほう (2023) : この本でいうところの、死と向き合う患者、とはがんの患者さんのことです。もし私が治療や接遇でがん患者さんに関わる医療現場スタッフであったなら、この本に出てくる薬丸先生(本書の登場人物、10年目の薬剤師。患者さんの対応で困ると以前緩和チームで一緒だった精神科医の清水先生に相談する、という設定)のように、折につけ院内で清水先生の姿を探すことでしょう。「あの対応はマズかったかも」「もっと自分に出来ることがあったのではないか」、、、まじめなスタッフほど患者さんとのやり取りを何度も頭の中で反芻し、己の不勉強や器の小ささ故に患者さんとのコミュニケーションに何か行き届かない点があったのではないかと振り返り、自責や罪悪感を募らせ、悶々とした時間を過ごすのかもしれません。この本に登場する清水先生は、そんなスタッフの気持ちを受け留め、その上で必要な知識を授けてくれます。「実際の落ち度がない場合に、自分を責めてはいけませんよ」そんな風に言ってくださった後で、「その患者さんの心の中では、その時に〇〇〇が生じていた可能性があります。そういう場合にスタッフとしてやるべきことは二つ。第一に・・・、第二に・・・。」なんて教えてくださるのですから、患者さんとのやり取りに悩んだら、「清水先生、ちょっと聞いて下さいよ~」と言いたくなりますよね。
書物というのはありがたいもので、自分の近くに実際の清水先生(または似たような存在の先生)がいなくても、机の上の書物に手を伸ばせば、本の中の先生と時空を越えていつでも対話してコンサルテーションを受けることが出来るのです。目次をみますと、さまざまなシチュエーションが網羅されていますので、薬剤師以外の職種の方もがん患者さんとのお付き合いがある方であれば、きっと「あぁ、こういう悩み、あるある! 」と感じる項目も多いと思います。
しかし、ですね。正直にいいますと、もしも私ががん患者さんとの関わりで心の底から悩んでいる若いスタッフだったら、これだけの本をゆっくり読むゆとりが持てない可能性もあります。。。おそらく、多忙と焦りと不安から『これだけ覚えれば大丈夫! 簡単、最短で【最適解】! もう間違えない、魔法の対応フレーズ20選(全患者さま対応)』(←今、私が適当に考えた架空タイトルなので、似ている本があってもそれはまったくの偶然とご理解ください)のような本に手が伸びてしまうかも。現場ではコス・パ&タイ・パを常に求められますし、勉強するべき事柄は山ほどありますし。。。
この本は、知りたいと思った項目周辺にざっと目を通すだけでもおおいに収穫があります。それに加えて、むしろ知りたいと思っていた事柄とは別のポイントで予想外に深く納得するような、そんな瓢箪から駒的な驚きの方が大きいかもしれません。仕事としてがん患者さんと関わる、それは表層的なハウ・ツー本では手が届かないような深みを求められる作業であると思います。ぜひとも余裕のあるときに、ぱらりぱらりと本書のページをめくってみて、「そうか、以前関わったXさんとのやりとりには、こういう意味があったのか」「そういえば、来週も会うZさんとは、こんな風にお話してみた方が良いかもしれないな」など、本書が文字を通して伝えてくれている内容とぜひご自分の体験を結び付けながら読んでみる、そんな静かな本との対話が、明日の臨床活動に味わいと深みを与えてくれるのではないかと思うわけです。
もう1冊、森さんが渡してくださったのは女性週刊誌。しまうまカウンセリングの鈴木所長がマスク関連のインタビューに応えた記事を確認したのちに、入院中の叔母に持って行って見せましたところ、目を輝かせて「これ、読みたかったの!」と喜んでおりました。 おススメ、まことにありがとうございました。
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