top of page

インドカレー屋の店長


以前あるインドカレー屋さんによく行っていた時期がありました。ナンがとてもおいしいのが特徴のお店で、温かくてふっくらして香ばしいナンを熱いカレーにつけて食べるのが私のこの上ない楽しみでした。バターチキン、キーマ、シーフードなどのカレーは私の大好物で、よく注文していました。

インドカレー屋とは言ってもインド人が経営しているとは限りません。その店はネパール人が店長でした。ネパールは中国とインドにはさまれた南アジアの国です。店内は小ぢんまりしていて、極彩色の色彩にあふれ、テレビではノリノリの音楽に合わせて大人数の人たちが踊っている感じの賑やかなインド風の番組が流れていました。サービスも良く、価格もリーズナブルでした。

もちろん例外もあるでしょうが、ネパール人の性格は概して人懐っこく親切だと言われています。その店の店長は接客専門の役割のようで、やはり温厚でフレンドリーな人でした。陽気というよりはほんわかした穏やかな感じです。日本に来てわりと長いそうで、助詞の使い方などに改善点は多少あるものの日本語力はかなりあると見受けられる人でした。かなり努力して日本語を覚えたようです。

毎回、カレーを食べていると、「辛さはどうですか?」と店長は日本語で聞いてきました。「ちょうどいいです。おいしいです。」と私が答えると、嬉しそうに店長は頷きました。常連客である私の顔を覚えてくれていて、1か月振りぐらいに店を訪れると「久しぶりですね」と声をかけてくれました。ネパールの行事や気候なども教えてくれました。

異国の地で商売をするのにはきっといろいろな苦労があったに違いないと思うのですが、店長の笑顔は屈託のないものでした。私にとってはささやかな異文化交流の場でもありました。おいしいナンもさることながら、私は彼の優しい人柄に会いに行っていたところもあったかもしれないと思います。

Comments


bottom of page