カウンセラーは人を操作するか?

最近SNSなどで、一見専門家風に心理的なアドバイスをしている人をよく目にするようになりました。


すべてを否定するつもりはないのですが、カウンセリングの専門家の私から見ると、中には首をかしげざるを得ないような内容のものもあり、うかつに信じてしまうと危ない内容のものも残念ながらあります。SNSはお手軽で便利なものですが、心身の健康に関わる情報の信憑性に関しては、細心の注意を払いたいものです。


SNSの影響もあってか、カウンセラーは何でも知っていて即座に解答を教えてくれる人、あるいは心理テクニックを使って人を操作する人というイメージでとらえている人はわりと多いようです。ところが、これはカウンセラーの実像とは一致しないイメージだと思います。こうした先入観でカウンセリングを受けると、現実とのギャップに驚くことがあるかもしれません。


実際のカウンセリングの専門家は、「一定の正解に導くために」「この人にどんな心理テクニックを使おうか」と考えながら対面するようなことは基本的にしないと思います。カウンセリングはカウンセラーの思い通りに人を操作する技術ではありません。


実際のところ、カウンセラーはまず目の前にいる人の話を一生懸命聞こうとしています。相談者の方と同じ地平に座って、語られる内容や気持ちを理解しようとして向き合っている感覚です。わからないことがあれば質問しますし、聞いていて浮かんできた気持ちがあれば、それを相談者の方に伝えることもあります。カウンセリングは相談される方のペースで進んでいきます。カウンセリングを続けることにより具体的にいつどこでどんな変化が生じてくるかはカウンセラーにもわからないことが多いのです。


人間は単純ではありません。人間の心に関する限り、何が「正解」なのか、何が「原因」なのかはよくわからないことの方が多いのです。すぐに答えを知りたいとか、犯人捜しをしたい気持ちもよくわかります。しかし人間に関することには様々なケース・考え方があり、簡単には判断できないことをよく知っているのが心理の専門家です。これは人を理解することを放棄しているわけではなく、安易に判断しないで人の心というものに対して謙虚に丁寧に関わっていく姿勢なのです。


確かにカウンセリングには「理論」や「技法」と呼ばれるものがいろいろと存在します。しかしそれらは決して完成品や万能薬ではありません。そもそもカウンセラーは知識やテクニックなどを介して、あるいはそれらの後ろに隠れて、人と対面しているのではありません。まず生きた一人の人間として対峙していることが最も重要なことなのです。もし知識やテクニックだけで済むのなら、担当はロボットでもかまわないでしょう。人間どうしの関係性の中ではじめて生まれる気づきや癒し、成長があると私は考えています。

         ( 手賀沼にて )