例えば、Aさんが「Bさんから嫌がらせを受けた」と真剣な顔で言ったとします。Aさんは本当に酷い仕打ちを受けたのかもしれませんし、実は軽い嫌味などを言われた程度だったのかもしれません。もしかしたら、勘違いや妄想なのかもしれません。状況を詳しく聞いていけば実際に何が起きたかわかることもありますが、最後まで事実が判明しないこともよくあります。しかし、少なくともその人が「嫌がらせを受けた」と感じている事実は本当なので、カウンセラーはそのつらい気持ちは尊重して聞くことができます。
カウンセラーはお話を聞いていて、どうしても外せない重要な情報については質問をすることがあります。全く質問をしないカウンセラーはおそらくいないのではないかと思われます。しかし注意しなければならないのは、カウンセリングは尋問や調査が目的ではないので、カウンセラーがしつこく聞き出すのは良くないということです。カウンセリングはカウンセラーの側が完璧な記録を作ることが目的ではありません。
ある内容についてカウンセラーが質問をするかどうかは、話の内容にもよりますし、クライエントの状態にもよります。質問をしないで待ってみようと判断することもよくあります。クライエントは言いたくないことは言わないでよい自由があり、曖昧なことを曖昧なままにしておく自由もあるのです。話の内容に抜けがあっても構わないのです。あくまでカウンセリングはクライエントのために行われるものです。「カウンセラーが聞き出す」のではなく、「クライエントが自発的に語る」のがカウンセリングの基本です。
オオバン(谷津干潟にて)
Comments