不登校の子どもを持つ親御さんから、「このままでは将来ひきこもりになってしまうのではないか」と心配するご相談をよく受けます。そのお気持ちはよくわかります。
ひきこもり支援を専門とする精神科医の齊藤環氏は、「子どもが家庭を安心できる場所だと感じられるようにする関わりが重要」(資料参考)と指摘しています。不登校の子どもに対しても、この考え方は非常に有効です。
子どもは学校へ行けないことで、すでに強い罪悪感を抱えています。その状況で親が「どうして学校に行けないの?」と責めたり、「こんな状態じゃ恥ずかしい」と嘆いたりすると、子どもの心の負担はさらに増します。やがて家から出ることさえ怖くなり、結果として長期間のひきこもりに発展する可能性もあります。
そこで親として大切なのは、子どもの気持ちに共感し、子どもの「味方」になることです。たとえば学校に行けない理由を探ろうとするよりも、「学校に行けなくても大丈夫だよ」と受け入れる姿勢を見せることが重要です。子どもが「自分の気持ちをわかってくれる存在がいる」と感じられれば、不安が軽減され、家庭が「安心できる居場所」になります。その結果、家の外の世界とも少しずつ向き合う力が育まれる可能性が高まるのです。
とはいえ、「学校に行けなくても大丈夫だよ」という構えを持つことは親御さんにとって簡単ではないでしょう。親自身も将来が見えない中で、大きな不安を抱えていると思います。不登校の子どもを持つ親のための支援団体やカウンセリング機関を活用したり、専門家のアドバイスを得ることも効果的です。子どもの気持ちを理解するヒントや親としての適切な対応を学ぶことができるでしょう。
不登校は親子にとって試練のように感じられるかもしれませんが、焦らずに子どもに寄り添う姿勢が鍵となります。親が子どもの「安全基地」となり、穏やかな関係を築くことで、ひきこもりのリスクを減らし、より良い未来へとつなげていきましょう。
資料: 『ひきこもりはなぜ「治る」のか? 精神分析的アプローチ』 斎藤環著 中央法規
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