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低山ブームからの連想

登山というと、最近は低山を登ることがブームらしいですね。登山靴やレインウェアなどのグッズも、よく売れているそうです。


ご存じかどうかわかりませんが、「にっぽん百低山」という番組があって、酒場詩人の吉田類さんが各地の低山を歩いてまわります。土地の暮らしぶりや伝説なども知ることができて、その手の番組が好きな人なら面白いと思います。この番組の影響や、コロナ禍の三密を避ける状況もあって、低い山を登ることがブームになってきたといいます。


低い山を登るメリットは、高度な技術が求められない、幅広い年齢層で楽しめる、費用がかからないなどのことがあります。お手軽なわりに、思い出に残るイベントにもなりうるわけです。ただ、登山では筋力も必要ですし、日本の低山のなかには意外に急峻な場所もあるので、注意が必要です。


ここで連想は目標の話に進みます。目標への道のりは登山によく喩えられます。頂上という目標を目指して、こつこつと歩むイメージです。


心理臨床をしていると、クライエントの方が設定した自分自身の行動の目標が、高すぎるのではないかとカウンセラーには感じられることがあります。そうなる理由は、緊張や焦燥・要求水準の高さ・責任感・白黒思考・自分への過信・周囲からの期待・現実逃避・情報や経験の不足など、人や状況によりじつにさまざまなものが考えられます。とくに心身の不調が著しいときは、目標設定について慎重になる必要があります。


実現可能な目標を立て、小さな成功体験を重ねて自信をつけることが大切であると、よく言われます。目標が適度であると成功率もぐんと上がり、失敗による落ち込みを回避できます。これは、必ずしも高い目標をあきらめることではなく、達成しやすい目標から優先的に実現していく考え方です。これは多くのカウンセラーが肯定する重要な経験則だと思います。私もそう思います。


しかし、言うのは簡単ですが、私も長い間、失敗を繰り返してようやっと自分が立てた目標の非実現性に気づいた経験がたくさんあります。人生には「成功」もあれば、つらいことですが「断念」もあります。後から考えれば、高い目標設定は判断ミスだったわけです。もしかしたら、人間というものは、必ずしも初めから合理的な意思決定ができるわけではないのかもしれません。しかし、断念に至るまでの過程で、人間は多くのかけがえのないことを学ぶのではないでしょうか。


参考文献

羽根田治(2025) 空前の低山ブームだが、リスクも。冬の低山で死なないための3つのポイント 山と渓谷オンライン


                                              カワセミ
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