生きていくうえで心の支えになるような大きなものを喪失してしまう場合があります。愛する人を失ったり、理想を求めることに挫折したり、健康を失ったり、罪を犯したりした人は深刻な生きがい喪失感に悩むことがあります。
『生きがいについて』という名著があり、生きがいを失った人の心の世界の共通点として、さまざまな特徴が挙げられています [神谷美恵子, 1980]。たとえば、「破局感と足場の喪失」「価値体系の崩壊」「無意味感と絶望」などがありますが、ここで取り上げたいのは「疎外と孤独」という特徴です。
それまでの平和な日常が自分から遠のいてしまったように感じられ、社会や家庭から疎外された感覚が出てくることがあります。対人関係がぎこちなく感じたり、人から注目されているような感じが出てきたり、明白な証拠がないにもかかわらず、なんとなく人から嫌われているようなつらい気持ちが出てくることがあります。
そのような苦境から脱するために必要なことの一つは、「周りから必要とされている感覚」だと思います。自分がわずかながらでも、周りの人々に貢献できたと感じられることは、生きていくうえで大きな力になると思います。人から感謝される体験が、自分の価値を再認識することのきっかけになり、強い力を与えてくれることがあるのです。
苦境に陥りながらもできることを見つけて、自分なりに他人との関わりを継続していれば、そのような「必要とされている感覚」を心から実感できる瞬間が訪れることが出てきます。自分から見ると大したことがないと感じるものでも、人に提供してみると非常に感謝されるようなものを自分の中に持っているかもしれません。あなたが動くことで、世の中の誰かが助かることがあるのかもしれません。それが本当に必要な人のもとへ届くならば、あなたは「つながり」を回復することができるでしょう。

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