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意欲と計画性

多様なケースがあるものの、一般的に心の不調から立ち直ってくると、次第に元気が出てきて、ものごとに意欲的に取り組めるようになってきます。言い換えると、人がうつ状態または回避傾向から回復してきたり、心の葛藤が解決されてきたりすると、現実適応のほうにエネルギーを使えるようになります。


ものごとに意欲的に取り組む行動にも、いろいろなレベルがあります。気力・体力のレベルに応じて、行動のあり方も短時間から長時間へ、近距離から遠距離へ、受動性から能動性へ、個人から集団へなどの変化が見られるものです。


無計画性から計画性へという変化もその一つと考えられます。ものごとを行う場合、単純な行動の場合は除いて、一連の行動の連鎖で成り立っていることが多く、その手順 procedure のことを「段取り」と言います。優先順位なども考慮して「段取り」を決めていくことが計画性ですね。計画性に乏しいことは「行き当たりばったり」などと、きついことを言われてしまう場合もあります。


前回の認知症のお話でもふれましたが、この「段取り」を組み立てる能力を含む実行機能が障害される代表的なものが認知症です。さらに言えば、発達障害の行動特徴の一部には、この実行機能の障害で説明できるケースがあります。実行機能は脳の前頭葉が中心的役割を果たしていると考えられています。


発達障害を持つお子さんでなくても、画用紙に複数のものを描画するとき、まず初めに無計画に一番書きたいものを大きく書いてしまって、結果的に他のものがアンバランスに小さくなっている絵があります。このような絵は自然な発達のプロセスでも生じることであり、たいていは子供らしくて微笑ましいものです。


日常でも計画性が必要になる場面はたくさんあります。よく取り上げられるのはお料理の場面ですね。そこでは、買い物をしてきたり、材料を切ったり、火に通したり、調味料を加えたりする手順を考えます。一連の作業工程というものがどうしても生じてきます。


元気に乏しいときは複雑な工程は避けたくなりますし、逆に非常に元気になってくると今まで作ったことのない難易度の高い調理に挑戦したくなる人もいます。


意欲と計画性が高い人ですと、たとえば旅行に出かけるときに、綿密に下調べをしたり、雨天の場合に備えて別のプランもあらかじめ用意したりする人がいるでしょう。偶然性を楽しむ要素も旅にはあると思いますが、旅行のような大きなイベントの場合は、多くの場合、計画性やそれに基づいて行動する能力がより重要になってきます。


カウンセリングを継続していくうちに、クライエントの方に納得できる流れで計画的行動が出てくる場面があります。そんなときカウンセラーは、元気になってきた一つの兆候としてとらえ、喜んでいる場合も多いのです。


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