計画的にものごとを行おうとすることは、効率的に作業をこなし、困った問題に向き合い、生活を楽しんでいく積極的な姿勢と捉えることができます。
ところで、誰もが経験することとは思いますが、計画の立て方が上手くいかず、思ったように目標を達成できない場合もあるでしょう。計画の組み立て方にも、何かコツがあるようです。
「SMART目標」という一つの考え方は、多様な場面の計画立案に関して参考になると思われます。この考え方は40年以上前にビジネス分野で提唱されたそうです。その後、教育や医療などに広く応用されるようになっています。日本の臨床心理学の教科書では、取り上げているものは少ないかもしれません。
・ Specific(具体的)…漠然とした目標ではなく、内容が明確な目標を立てる。
・ Measurable(測定可能)…進み具合を把握できるように、数値化などを用いる。
・ Achievable(達成可能)…自分にとって無理のない、実現性のある目標にする。
・ Relevant(関連性のある目標)…自分らしく、または大きな目標に合う目標にする。
・ Time-bound(期限の設定)…いつまでに達成するのかを明確にする。
それぞれの頭文字を取って「SMART目標」と呼ばれています。後の研究では、多様なバリエーションが生じ、たとえば「SMARTER目標」と呼ばれるものでは、前者にさらに2つの要素が追加されています。
・ Evaluated(評価される)…進捗状況にもとづいて目標を検討する。
・ Reviewed(見直される)…必要に応じて目標を修正する。
これらを見てくると、計画を作成するコツは、明確性や実現可能性、そして修正可能な柔軟性が大切であると考えられているようです。他には、細かすぎない計画とか、ある程度の余白のある計画などでしょうか。
カウンセリングで来談される方は、抑うつ・不安を持っていたり、行動の方向性に迷いがあったり、衝動抑制に困難がある方も多いので、日々の行動計画を立てることがいつも容易とは限りません。むしろ初期の段階では、休養や環境調整が第一優先になるケースもありますので、心身の状態をよく見ていく必要があります。
しかし、そのような方々に対しては、少し意欲が出てきた場合に、行動目標をシンプルなものから一緒に考えていくこともあります。身近なところから始められる課題設定のお手伝いをすることにも、カウンセラーは習熟しています。
参考文献
Locke, E. A., Latham, G. P., & Smith, K. J. (1990) A theory of goal setting & task performance. Prentice-Hall.

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