東洋英和の岡本浩一先生に大学の公開講座に来ていただき、「抹茶茶碗のうんちく:歴史性・科学性」というタイトルでお話しいただいた。
岡本先生とは日本催眠医学心理学会でご一緒させていただいているご縁なのだが、社会心理学(リスク心理学)がご専門でありながら、NLPの最上位のマスター・トレーナーでもあり、さらに裏千家の講師として多くのご著書もあるという非常に博学多才なお方である。
岡本先生の『80億人の「侘び寂び」教養講座』(淡交社)によると、茶道では井戸の釣瓶を水差しに用いるような転用を「見立て」というそうだ(p27)。
「侘び寂び」とは、完璧に作り込んだ器ではなく、不完全で急いで作られたりした無作為の器に価値を見出す全く新しい視点である。つまり、それまでの完璧とは逆の不完全な造形に美と価値を見出している。
「見立て」や「侘び寂び」は既存の物の見方に対して全く新しい価値を付与することである。NLPやアドラー心理学のリフレーミングのロジックにも通じる。
きちっと整ってきれいなものより、歪み、シミ、欠け、穴、変色、変形が味わいになる。拡大すれば使い込んだ道具や着古した服もそうなのかもしれない。
人生においても、完璧であることに価値を置くのでも、アドラー心理学でいう「不完全である勇気」を持つだけでもなく、もっと積極的に、色々な不完全性の中にある美と味わいを感じる創生的な「見立て」の視点が可能である。
カウンセリングでの視点や意味づけとしても大変示唆に富むお話だった。

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