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日々の小考察

カウンセリング業界では、最終的に明らかな改善が見られたケースのことを「成功事例」と呼び、改善に役立った対応などをカウンセラーが研究する場合があります。カウンセラーのどんな働きかけがどのように良い変化をもたらしたかが詳細に理解できれば、他の類似したケースにも応用していけるというわけです。言うまでもなく、多くのクライエントの方々に貢献していくために、これは大事な作業ですね。


成功事例に限らないですけれども、事例全体の展開というマクロな視点での考察は大切です。ただ、もっと小さな視点での「うまくいった言葉かけ」のような事実についても、もっと考察に値するんじゃないかと、最近ふと思いました。それを研究的にもっと精緻にした同様の発想に、グリーンバーグという人の言う「介入モジュール」という考え方があるそうです。心理療法に組み込んでいける、実証済みの対応方法のセットみたいなものです(参考文献:第4章)。さまざまなモジュールがあり、興味深いです。


かなり単純化した例を挙げます。たとえば、ある話題がカウンセリングで話されているとして、「そのことは、近頃は結構いろんな人が経験しているみたいですよ」とカウンセラーが伝えたところ、クライエントの人が意外なくらいぱっと明るい笑顔になり、とても安心した様子を見せ、その後会話がスムーズに進んだとします。そういう1分間にも満たない面接の小さな出来事も、ピンポイントですごく考察に値するのではと感じています。そういう事実こそ、積極的に記録に残していこうと今は思うようになりました。実際のクライエントの方のポジティブな反応をもとに、実証的に考えていくことが必要ですから。


「なぜ、そんなにほっとしてもらえたのだろう?」とか、「そのタイミングで伝えることが、なぜ良かったのだろう」などとカウンセラーが自分でいろいろ考えてみるわけです。背景にあるクライエントの人の感じ方や状況、面接の話の文脈などについても考えます。そうすると、また別のクライエントの人の同様の場面で、その経験が生きてくることがあります。


そのような、面接場面における小さな出来事をその都度考えていくことであれば、多忙なカウンセラーであっても、普段の仕事でいつも無理なく行っていくことができます。一見簡単なことではありますが(そして多くのカウンセラーがすでにやっていることとは思いますが)、そういうささやかな振り返りの積み重ねによっても、カウンセラーは少しずつアップデートされていくのだと思います。


参考文献

福島哲夫編(2016) 臨床現場で役立つ質的研究法 新曜社


                                  (カルガモ)


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