死者との対話は重要なことです。
お盆になると墓前で亡くなられた家族や先祖に話しかけます。
大きな事故や災害では毎年のように追悼集会が開かれて亡くなられた方への言葉があらわせられます。
これらは集団的かつ行事として行われる死者との対話です。
古今東西、亡き人とどう接していくかということは自然であり大切なテーマなのです。
時に、カウンセリングにおいても、身近な人を亡くされて来談される方がいます。
その人がいなくなってしまったので、どのように接したらいいのか途方に暮れるのはもっともなことです。
もちろん、その人の思い出や、来談された方の様々なお話をしっかりお伺いします。
そうした上での話ですが、よくこちらから提案しているのが、この死者との対話です。
これはサイコドラマの有名な技法であるエンプティーチェア(空の椅子)を用いたものです。
ひとつ椅子を出してきて、利用者の方に、その椅子に今は亡き方がそこにいると思ってお話ししてもらいます。
その人の記憶と想像で話してもらうので、死後の世界を信じているかどうかは関係のないことです。
カウンセラーはその方が空いている椅子に座っている相手の方と声を出してお話しするのを横で黙って聞いています。
時には語りかけのお手伝いもします。とてもおごそかな時間です。
詳細は省きますが、カウンセリングならではのダイナミックな手法だと思います。
私の経験では、導入のタイミングさえちゃんとしていれば多くの方に大変良い効果をもたらしています。
ほとんどの方が、死んだ人とはもう話せないと思い込んで、こちらからのコミュニケーションを絶ってしまい、そのせいで、心の中には言いたいことが山ほど溜まっているのです。
それを話す機会があるとわかれば、思っていたこと、伝えたかったことを口にすることができるのです。
それでよいのです。
カウンセラーが霊媒師になったつもりでいい加減なあてずっぽを言うより、ご本人自身の心で亡くなられた方と対話してみるのが何よりです。
この時間は、過去を回想しているのではありません。
今ここで、相手と語る現在の会話なので、心理的な物事、対人関係の文脈が進行していきます。
今だからこそできることなのです。
墓前でのつぶやきも今の会話のひとつと言えます。
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