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目標の具体性について

今回はカウンセリングの目標ということについて少し考察してみましょう。ここでは、プライバシー保護の観点からユニークな事例は語れませんので、あくまで一般的な場合のお話になります。いろいろな例外もあることを念頭においてお読みいただけると幸いです。


カウンセリングではふつう、初回や2回目などの早い段階で「どうしてほしいですか」とか、「どうなりたいですか」というような言葉で、カウンセリングに対する要望をお尋ねします。その質問に対して、来談された方々は多様な返答をされます。


たとえば、次のようなことをお話になります。

「うつの気分を何とかしたい」

「こういう状況を、専門家の人はどう思いますか」

なかには「目標がわからない」という気持ちを語る方もいます。


カウンセラーの傾聴中心の対応で元気になっていただけることもあります。しかし一般に、非常に短期のカウンセリングで解決に至りたい場合は、できれば目標が具体化されて絞られているほうが話を進めていきやすいのです。ときには、目標が多すぎたり、揺らいだり、漠然としすぎたりしている場合があります。たとえば、「うつの気分を何とかしたい」という場合でも、もう少し目標を明確にして「まず、7時間はぐっすり眠る時間を作りたい」とか、「復職の前に図書館に通えるようにしてみたい」などと、行動の課題をはっきりさせたほうが、そのための生活の仕方などを一緒に考えていきやすいのです。


すぐには目標を具体化できない場合でも、初期の面接で生活習慣、仕事の仕方、あるいは人間関係のどれに焦点をあてるかなど、その人に合った課題設定の仕方をカウンセラーと一緒に考えていくことも、もちろんできます。したがって、カウンセリングの前に必ず目標を決めてこなくてはならないということではありません。面接を続けているうちに目標が少しずつ見えてくる場合もわりとあります。


実際、カウンセリングのテーマとなる課題は、そのような短期的でシンプルな行動課題としてまとめられるものだけとはかぎりません。たとえば、「人間関係が上手になりたい」とか、「性格を変えていきたい」という人生全般に関わるレベルのテーマの場合、非常に漠然とした巨大なテーマになることが多く、変化が見られるまでの期間もかなり長期になることが普通です。そのようなお話もお引き受けすることがありますが、たいへん地道な面接になるケースが多いように感じられます。


長年続いている家族関係のあり方を改善していくような例ですと、深刻な場合では10年以上の単位で考えなければならない大事業と見立てられることもあるのです。もちろん、経験豊かなカウンセラーでも、解決に至るまでどれくらいの時間がかかるか判然としないテーマもあります。本当にさまざまなケースがあるので、一概には言えない場合も多いのです。逆に、時間がかかりそうな課題でも、意外と整理しやすい問題の場合もあります。したがって、自己判断のみで簡単にあきらめないことも大切です。


                               アオサギ(谷津干潟)

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