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結論を焦る気持ち


何か困ったことが起きた時、自分ひとりで悩まないで他人の考えを聞いてみることは良いことです。私もそういう時は例えば本を読んで解決策を求めることもあります。ただ、本に書いてあるからといって、それが絶対に真実とは限りません。私は若い頃は本に書いてあることを鵜呑みにする傾向が強かったと思います。

何でも信じ込んで他人の結論に安易にすがることは、自分で考えることを放棄することにもなります。早い段階で結論を下してしまうことで、他の可能性が見えなくなることもあります。例えばいろいろな対処をする前に、はじめから「どうせ自分は何をやっても駄目だ」と決めつけてしまう人もいます。でも本当のところはやってみなければわかりません。可能であれば、結論が正しいかどうかを自分で試行錯誤して自分の目で確かめることが必要です。そうは言っても人間一個人が自分で経験できることには限界があるので、他者の経験を聞いたり、文字や映像で知って参考にしたりしていくことは必要ですが。

カウンセラーは人に助言を与えることが期待されます。もちろん相談者の方が緊急に何かを決断し対処をしなければならない場合は、「とりあえず今できること」を助言することがあります。しかし、通常じっくりとカウンセリングに取り組んでいく場合は、相談者の方に自分で考えてもらいたいので、カウンセラーは簡単に結論を教えないで黙っているところがあります(正直に言ってしまえば、カウンセラーも答えをよく知らない場合があります)。本当の意味で問題を解決に導くためには、相談者の方に自分で考えたり試したりしてもらうことが実はどうしても必要なのです。

なかなか厳しい現実ですが、特に心に関することは、本当のことはそう簡単にはわからないと私は思っています。ある考えが浮かんだとしても、そう考えると納得できるかどうか、腑に落ちるかどうか、しっくりくるかどうか、何か違う感じがないだろうかということを丁寧に自分の心に聞いてみることが大事だと考えています。しかしあきらめずにその違和感を辿っていくと、思いもかけない景色が見えて気持ちが晴れてくることがあります。カウンセリングを続けていくとはそういうことです。



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