特に大人を対象としたカウンセリングでは、言葉のやりとりが重視されます。ただ、カウンセラーは言葉だけに注目しているわけではありません。今回はカウンセリングの中の非言語的なメッセージについてお話ししたいと思います。
「顔で笑って心で泣く」という言葉があります。泣きたいくらいつらい心情を抑えて、顔では楽しそうにするという意味です。一見前向きに見えるクライエントが、実は心の中では悲しんでいることがあります。それは、震えた声の調子や堅く握りしめた手、とぼとぼとした歩き方などに表現されていることがあるのです。それらのサインはうっかりすると見逃してしまうかもしれません。
聞くということは、単にクライエントの言葉を理解することだけではありません。表情や身振り、声のトーンが表すメッセージを感じ取ることです。それらの非言語的メッセージが言語表現よりも、本当の気持ちを示していることがあります。この点では、電話カウンセリングなどよりも、顔が見え、息遣いが間近に感じられる対面カウンセリングが最もクライエントの非言語的メッセージを読み取りやすいと言えます。ただ、コロナ渦においては、マスクを着用したままのカウンセリングは当分続きそうです。カウンセラーは顔のパーツとしては、目の表情に注目するしかありませんね。
単純に表面だけを見ていては、正しく理解できないことがあります。推理小説でよくあるように、わずかな証拠から予想すらしなかった真実が明らかになってくることがあります。カウンセラーの細やかな観察力や違和感を感じとるセンスは、そういう意味で極めて重要なものです。
一般の方の中にはご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、カウンセリングは描画や音楽などを利用したものもあります。言葉で表現することに苦手意識を感じている人に対しては、そのような非言語的方法をカウンセリングの中で行うこともできます。私もロールシャッハテストやバウムテスト(木の絵を描く心理検査)、箱庭療法を集中的に勉強した時期もあります。言語を用いるアセスメントや心理療法とは違う面白さがあります。
(コガモ)
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