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高齢者とエアコン(2)

お年寄りが猛暑に弱い原因は、生理的・認知的・社会的な要因が複雑に絡み合っています。そのため、学際的な研究と多角的な支援が必要であると言われます。

最近の資料を探してみると、『猛暑が高齢者の精神的幸福に及ぼす影響の理解:系統的レビュー』という今年1月に公開されたレビュー論文がありました。そこにはだいたいこんなことが書かれています。


・酷暑が与える影響(睡眠障害、認知機能低下、不安抑うつ、社会的孤立)は、複雑で相互に関連している。

・低所得者、持病のある人、少数民族、介護施設居住者など、高リスク集団特有の脆弱性を考慮する必要がある。


デジタル機器を使いこなせず、熱中症警戒アラートや気象情報にアクセスしづらくなることも考えられますね。酷暑で外出の機会が減った人や、歩行に困難がある人は、社会的孤立を招くことで、地域社会からの情報が届かないところに引きこもってしまう可能性もあります。

経済的困窮からエアコンを設置していないケースや、ある種の持病により暑さに対処する身体的機能が弱いケースもあります。

これらの多様な要因は相互に影響し合って、悪循環を生じることがあるようです。しかしまだ、十分に解明されているとは言えません。先に挙げた論文には、酷暑と高齢者のメンタルヘルスに関する研究の課題も示されていました。


・猛暑はグローバルな現象であり各国で研究がされているものの、それだけに研究デザインや評価基準が不統一で、結果を統合しづらいところがある。

・従来は横断的研究が多く、縦断的研究による精緻な因果関係の解明が遅れている。


とくに私が注目することは、mental well-being (精神的幸福)の定義があいまいで、各国の研究は多様な測定尺度によって評価されている現状があるということです。そのため、所見の統合が困難になっています。たしかに、幸福とは何なのかと聞かれた時に、みんなが納得するような一つの答えを決めるのは難しいことです。心理学やメンタルヘルスの領域では、昔からこの種の定義について、議論が繰り返されてきているようです。

そのような研究の困難さがあるにせよ、酷暑への対処は誰もが避けられない課題になっています。エアコン設置の助成制度が整ってきてはいるものの、利用率は制度により大きく異なり、十分とは言えない現状のようです。とくに弱い立場の人々である高齢者やその高リスク集団に、研究成果をふまえた効果的な施策が、より万全に行われるようになることが期待されます。


参考引用文献

Jifei Chen and Laurence L Delina(2025)  Understanding the impacts of extreme heat on the mental well-being

of older adults: a systematic review Environmental Research Communications

Open Access

箇条書きの部分は、ブログ記事筆者が要約したものです。

アオサギ(葛西臨海公園)
アオサギ(葛西臨海公園)

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