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深く話す

 カウンセリングでの会話の特徴のひとつは深い話ができることである。

 深く話すことに意味がある。

 深層心理とか無意識とかの深いではなく、話の内容が深いということだ。

 あるいは、話が詳細だったり、気持ちがこもっていたり、質が繊細だったりする。

 急かされたり、大雑把だったり、はしょっていたり、断片的だったり、かいつまんでいたり、一方的ではない。

 日常で深い話をすることはそう多くはない。信頼できる人と、時間を取って、落ち着いて話さないとならない。だから、会食などの特別な場を設けないとならないこともある。

 カウンセリングではそれらのセッティングを全部省略して、ただカウンセリングルームに来れば深い話が始まる。話の前座の食事や景色や素敵なラウンジルームはない。いきなり単刀直入に深い話が展開する。そういうセッティングだからそうなるだけなのだが。

 実も蓋も無いが、カウンセリングは目的に対して効率的で、秘密は保たれ、後腐れの心配がない。深い話だけを切り取ってしている、かなり人工的な場なのである。

 けれども、カウンセリングでは常に深く話しているわけでもない。日常的な出来事や世間的な話を、気の向くままに話すこともある。

 ある事を話すに際して、自分のペースでおもむくままたっぷりと話せるし、カウンセラーは基本的には話にポジティブな関心を持っているので、聞いてもらえないのではないか、反対されるのではないかという心配をせずに自分の話に集中できる。そうしていると、自ずから話の質の解像度は上がり深い話となる。

 深い話をすることで、言いたいことを言えてすっきりする、言葉にしてみて新たにわかってくる、再考してみて気づきがあるなどの新しい視界がもたらされる。

 これらがカウンセリングという独特な場での話の深い解像度である。








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