ブライアン・イーノ Ambient Kyoto

更新日:7月14日


 前回、このブログで『イーノ入門』を紹介したら、やはり京都でイーノのインスタレーションを体験したい思いが日に日に強くなりました。そんなわけで、先日、思い立って京都に行ってきました。

ブライアン・イーノ Ambient Kyoto 京都中央信用金庫旧厚生センター(8月21日まで) https://ambientkyoto.com/

 京都駅から数分歩くと、会場の京都中央信用金庫旧厚生センターに着きました。築90年の近代建築の佇まいです。「Ambient Kyoto」はイーノによる3つのインスタレーション作品で構成されています。3階から順番に観るのを会場の方におすすめされたので、その通りの順番で3つの作品を体験しました。通常、展覧会には「観賞」という言葉を使いますが、どの作品も空間と時間が一体となって自分の周りを取り囲みます。このことを思い出すと、ここでは「観賞」よりも「体験」がより合っているのではないかと私は思いました。

 まずは3階に展示されている「The Ship」から。靴を脱いで部屋に入りました。他の2作品は聴覚(音)と視覚(イメージ)の重なりや交わりが織りなす様々な効果や現象がインスタレーションとして具現されていますが、この「The Ship」は3つの中で唯一、聴覚のみに焦点を当てた作品です。暗い部屋に様々な大きさのスピーカーが配置されています。これらのスピーカーがイーノの「The Ship」*を大きな音量で再生します。ただ音楽が流れているだけではありません。「The Ship」の楽曲の様々な構成要素-イーノが歌うメロディ、朗読、人々の声、信号や波音などの効果音、シンセサイザーや楽器の音など-がそれぞれのスピーカーに割り当てられていて、非常に立体的なステレオ効果を生み出していました。暗い部屋で1時間ほど音の移り変わりにじっと耳を傾けていましたが、まったく飽きませんでした。

 階段を降りて次に向かった「Light Boxes」は、タイトルが示すように、光にまつわるインスタレーションです。蛍光灯を使った作品で知られるアメリカの美術家、ダン・フレイヴィンの作品を思い出しました。何度聴いても覚えることのできない音楽が流れるなか、部屋の壁側に設置された3つの装置から発せられる光の色がゆっくりと変わります。ある1つの装置をしばらく見ていて、他の装置に目をやると、初めて見る色の組み合わせの光がそこにありました。そして、また別の装置の方を向くと、やはり、先ほどとは違う色の組み合わせの光が放たれています。普段、私は何を基準に物事の差異や同一性を判断しているのだろうか。そんなことを考えながら光を見つめていました。

 最後の部屋は「77 Million Paintings」。この作品も「Light Boxes」と同じく、常に変化し続けています。複数のスクリーンに映し出されたイメージが刻々と変化する過程に立ち会う作品といえるでしょう。また、この作品の場合も「Light Boxes」と同様に、何度聴いても記憶に残らない不思議な音楽でした。周囲の環境に溶け込んで慎ましく鳴り続けるアンビエント音楽の特性を考えると、このような音楽がこの場にふさわしいのかもしれません。この作品にとって音楽は決して脇役ではないはずですが、長時間聴いていようと、とにかく覚えられない音楽でした。座り心地のよいソファに身を埋めて、5時間ほどこの部屋で過ごしました。

 以上、「Ambient Kyoto」だけの京都旅でした。

*「The Ship」...当初はインスタレーション作品として制作されたが、2016年に同題のアルバムとしてリリースされた。


                              

受付 加藤 麻衣