春の歌
- 23 時間前
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春を題材にした歌は、数えきれないでしょう。四季の中でも一番多いかも知れません。物心ついて聞かされた童謡は、「春が来た」でした。文部省唱歌です。「春が来た 春が来た どこに来た 山に来た 里に来た 野にも来た」というそれぞれの句がどれも5音から構成されている曲は、ずいぶん前衛的に聞こえたりします。誰が作ったのか調べると高野辰之でした。さすがです。
子どもが親しむ春の歌は他にもたくさんあります。「春の小川」「春よ、来い」、外国の歌ですが、チェコの「おお牧場は緑」、アイルランド民謡「ロンドンデリーの歌」、ロシア民謡「カシューシャ」などなど。ラジオから流れ出る沢山のポップス、スピッツの「春の歌」、松任谷由美の同名異曲「春よ、来い」、サザンオールスターズ「唐人物語(ラシャメンのうた)」など枚挙に暇がありません。
水ぬるむ春は、なんだか楽しい、ウキウキする季節だとされています。確かに陰鬱な冬というイメージから一転して、一気に花が色づき、ひばりが囀り、命が輝き始める季節です。
桜の歌は春の歌に含まれるでしょうが、少し違ったニュアンスがあります。そこはかとない陰影が歌のはしばしに宿るからです。本居宣長の「敷島の 大和心を 人問はば 朝日に匂ふ 山桜花」は、先の大戦においても大いに「利用された」有名な歌ですが、このような燦然と光り輝くような歌はむしろ例外なのではないでしょうか。日本人なら知らない人はいないであろう紀友則の「ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ」こそ、桜の歌のエッセンスが一首に詰まっています。「さくら さくら 今、咲き誇る 刹那に散りゆく運命(さだめ)と知って」と森山直太朗さんは、卒業の時節と重ねて歌います。旧制高等学校のひとつ松山高等学校の寮歌「春寂寥」は、二十歳前後の青年の心象風景を如実に表していると思います。「春寂寥の 洛陽に 昔を偲ぶ 唐人(からびと)の」。
春を「残酷な季節」と形容した詩人・文芸評論家、T. S. エリオットを、慧眼と賞賛するか、ひねくれていると貶めるか、考えてしまいます。しかし、春についてのユニークなフレーズとして印象的です。
「おごりの春のうつくしい」ことを慶びたいものです。散りゆく運命を知りながら。






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