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カウンセラーの思い込み

カウンセリングの面接を重ねながら、医療機関も併用して受診する人もいます。たとえば、ある人が、医師から何らかの診断名を伝えられた場合に、どんな気持ちになるでしょうか。


予想通りで、「やっぱりな」と思う人もいるでしょう。予期しない結果を聞いて意気消沈する人もいるでしょう。なかには、「自分の状態がはっきりわかって、見通しが立ち安心した」と感じる人もいるかもしれません。


実際にどんな気持ちになったかは、カウンセラーもクライエントに聞いてみるまではわかりません。カウンセラーの感じ方と、クライエントの感じ方は違うかもしれません。相手の感じ方を尊重して耳を傾けることが、相手を大切にする態度になります。


たとえば、「病名を告げられたら悲しいに違いない」と固定的に思い込んでクライエントに対応してしまうと、もしかしたらズレたやりとりが生じてしまうかもしれません。ズレた働きかけに気づいて、決めつけていたことをすぐ撤回できれば、対話の軌道修正は可能です。


このような思い込みの現象は、「認知バイアス」などとも呼ばれ、最近では社会的な関心が高まってきているように思われます。認知バイアスは状況の判断や意思決定に影響を及ぼし、ときにマイナスの結果をもたらすことがあります。


クライエントの認知バイアスを扱うはずのカウンセラー自身も人間ですので、自身の認知バイアスから完全に逃れることは到底できません。差別や偏見に結びつく考え方はもちろんいけませんが、とくにカウンセラーとしての経験が増えてくると、「こういう場合はこう感じる人が多いものだ」などと柔軟性のない思考をしてしまう局面も出てきそうです。


カウンセラー自身も、自分が勝手に決めつけていないか気をつける必要があります。つねに謙虚に自分を振り返り、相手の話をよく聞き、知識をアップデートしていくことが必要です。


                              オナガ(葛西臨海公園)


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