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感情に色づけられた認識

どんなに冷静に見える人にも、感情があります。喜怒哀楽があるから人間らしい、あるいは情緒的なバイアスにもとづく事実と認識のずれは完全には回避できないとも感じます。みなさんは、どう思われるでしょうか?


たとえば、ライブ参加などの行動的な体験にしても、あるいは一冊を読み切った読書体験と言われるようなものでも、感情を伴って経験されたものは記憶にも深く定着します。また、その人自身の達成感・充実感や、パーソナリティ形成などに大きなインパクトを与えることも多いと思われます。その体験を他の人たちと共有するときにもリアルな感情を込めて語り合うことができます。


一方、感情の高ぶりが人の認識にマイナスの影響を与える場合もあります。強い情緒的反応が物事の把握を事実に反する方向にシフトさせ、そのために精神的な症状が悪化する人がいたり、たとえばソーシャルメディアで拡散されて社会的な混乱を招いたりすることもあるのが現代の状況です。


カウンセリング場面ではどうでしょうか? 発達障害傾向を持つ方への援助では、感情のみに基づいて衝動的に判断して行動を開始したことにより、望まない結果をもたらすような場面に出会うこともあります。


アンガーマネジメントでは、強い怒りや憎しみが、その対象となる相手を過剰に悪い存在として決めつけてしまう心理を扱うこともあります。逆に、相手にも非があることかもしれないのに、「全部自分に責任がある」と考える場合もあります。


森田療法などでも言われてきたように、強い不安や心配があるために、出来事を実際以上に悪いほうに解釈してしまい、ますます恐くなることもあります。たとえば、最近始まった一時的な問題を「根本的な性格の問題」とか、「何か重篤な病気と関係があるのではないか」などと捉える場合があります。


うつ病への治療から始まった認知療法では、抑うつ感情によって悲観的なほうに傾いてしまう自己認識や人間関係、将来に関する認識を、よりバランスの取れたものにしていくアプローチをとります。


まとめると、感情の豊かさが人生に深みをもたらすことは事実である一方、強すぎる感情が人の認識に好ましくない影響を与える場合も、誰もが経験するものです。感情と認識の関係を考えることは、自己理解や他者理解に役立つことが多いです。カウンセリングでは、このようなテーマをご一緒に検討していくこともよくあります。


                                         水元公園のコゲラ
                                         水元公園のコゲラ

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