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カウンセリングで何をするのか?(2)

前回の(1)ではカウンセリングで実際に何をするのかについて、ストーリーを組み立てるという観点からお話ししました。今回は医療機関とカウンセリングの役割分担のお話も含めて、診断と見立ての観点からお話ししたいと思います。


心の悩みや症状を抱えて、心療内科・精神科の医療機関で診察を受けると、たいていは診断名がつきます(専門の医師でも診断に時間のかかるケースもあります)。診断に基づいて薬が処方されることも多いですし、診断書を医師に作成してもらい、休職などの際に会社に提出することがあります。また、それまで自分の状態が何なのかはっきりせずもやもやした気持ちだった人が、診断がつくことである程度安心するということもあります。医学的な診断が大事になるケースは多く存在します。


ただし、診断がつけばすべてがすぐに解決するわけではありません。ただ薬を飲んで休めば快方に向かうケースもないわけではありませんが、問題の性質によっては、受診したご本人が自分と向き合う作業や具体的な行動を積み上げる作業を進めていかなければ改善しないこともよくあります。診断がつけば終わりではないのです


臨床心理士や公認心理師などのカウンセラーは、医師ではないので「診断」という行為はできませんし、もちろん公的に通用する診断書を書くことはできません。しかしながら、カウンセラーはカウンセリングをしていく上で、相談者の方がどのような人で、どんな背景があって、どんなことに困っていて、これからどうなっていくのかということを常に考えながら対応しています。これは一定の診断基準に基づいて病名をつける「診断」とは異なり、「見立て」と呼ばれています。


ひとくちに発達障害と言っても、人によって困難を感じていることはかなり異なります。同じ診断名でも内容の現れ方は千差万別です。かなり具体的な指示がなければ仕事ができない場合や、相手の意図や感情を考えながら行動するのが苦手な場合、マルチタスク(同時に二つ以上の仕事をこなすこと)ができない場合など、じつに様々な生きづらさを感じているものです。「見立て」とは、診断名という大きな枠組みを超えて、その人がどのようなことに困っているのか(あるいは逆に何が得意なのか)をより詳しく具体的に把握することでもあります


実は、ある生きづらさを感じていても、その当人がそれを明確に自分の言葉で表現できるとは限りません。発達障害という診断をもらっても、具体的に自分のどういうことがネックになっているのか、自分のどんなところが長所なのか、よくわからないという人も多いのです。カウンセリングや心理検査ではそれを言葉にできるようにきめ細かくお手伝いをしていきます。さらにそれをふまえて、どう行動すれば生活しやすくなるかを一緒に考えていくこともできます。



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